第3話後編「その願いは叶えさせたくないから」03
◇ ◇ 週明けの月曜日の放課後、つきねは軽音楽部の部室にいた。 つきねは職員室で管理されている部室の鍵を今日初めて借りた。 今は一人だ。ここねは学校を休んでいる。 一時的に熱が下がることはあったが、両親が大事を取らせたためだ。...
鈴代ここねと鈴代つきねは、バーチャルシンガーユニット「ココツキ」として活動している姉妹だ。二人とも歌うことが大好きで、現在音咲高校の軽音部に所属しながらYouTubeとニコニコ動画、Twitterを中心に日々奮闘中。
そんなココツキの二人が住んでいる美癸恋(みきこい)町には、昔から伝わる御伽噺があった。幼い頃、ここねとつきねも時おり寝しなに聞かされていたものだ。
人と人ならざる者が恋に落ち、愛を育み、子をなす。
しかし、それは自然の摂理に反する異種婚姻ゆえに、その子供はある種の『呪い』を受けて生まれ落ちた。
大変仲睦まじい姉妹に育った二人は、やがて『呪い』のためにかたや命を喪い、かたや命を奪うことを宿命づけられていたのだ。そんな悲しい姉妹の昔話が、この町ではひっそりと語り継がれてきた。 誰も気に留めることのない、どこにでもあるような伝承の一つだ。
これから紐解かれるのは、鈴代ここねと鈴代つきねがココツキの活動を本格的に始める――ほんの少し前の物語。
原作:ココツキプロジェクト ストーリー構成:朱白あおい 執筆:霜月ころな(ミームミーム)