第3話前編「夕暮れ時に影重なる」04

◇   ◇


翌日。つきねも気分転換に街に出てみることにした。


美癸恋(みきこい)町の中心部は人混みと喧騒で溢れている。


つきねはどこに行こうかと迷い、ふらっとショッピングモール内にあるゲームショップに足を運んだ。


(まだ昨日やり始めたソフトも序盤だし、我ながらどうかと思ったけど……)


新しい服を見に行きたいと思ったが、それは明後日ここねと見て回る約束になっている。今一人で見てしまうのはとてももったいない。


そんなことを考えながら店内を見ていると、ゲームソフトの発売と同時に出版された公式攻略本がつきねの目に入る。気になって、手に取ってしまうが、買うのは少し躊躇している。


(こういうのは最後まで書いてないし……)


以前、父に買ってもらったことがあって、あの時はがっかりしたのを覚えている。


公式だけあって攻略情報だけでないトリビアも載っているかもしれないが、攻略するだけならスマホで調べればできるはずだ。つきねはそっと本を棚に戻す。


その時——


(ん?)


背後から視線を感じ、つきねは周囲を見回した。


けれど、それらしき人物はいなかった。


「……気のせいかな」


それ以上はつきねも気にせずに新作ゲームのPVに視線を移した。


次にフロアを移動したつきねは、お気に入りの雑貨を扱っているスペースをゆっくり見てまわった。


ちらほらと自分と同世代くらいの少女たちの姿が目に入る。


(やっぱり勇気を出してクラスメートを誘えばよかったかなぁ)


姉のここねが友達と遊びに行くと聞いた時、つきねは今と同じことを思った。


病気にならなければもしかしたら友達と過ごす日があったかもしれない。


連休が終わった後の休日に遊びに行くのは難しいかもしれないけど、夏休みまでにはもっと仲良くなりたい。


「あ、これ可愛い」


つきねが目を止めたのは野ウサギのスマホスタンドの置物だ。


キャラクターグッズというよりどちらかと言うと、写実的なデザインをしている。


「……三千円」


これを買えば部屋でスマホを探し回ることも減るかもしれないが、思ったよりも値が張る。


つきねは今回の購入を断念し、他の小物を手に取った。


後ろ髪を引かれる思いがないかと言えば、嘘になる。


けれど、近くに並べられたサンドアートの文様や古風の鍵の形をした砂時計を見ていると楽しくて、時間は瞬く間に過ぎていった。


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ココツキオリジナル小説

 『月ノ心ニ音、累ナル。』

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