第1話前編「クローバーに約束を」02

◇   ◇


目を覚ますと、ここねは自室のベッドの中だった。


青々と一面に茂る白詰草も温かな陽だまりもなかった。あるのは自分の体温のぬくもりだけだ。


「真実の愛……かぁ」


ここねはまだ知らない気がする。歌詞でよく見かける言葉ではある。


興味はあるし、学校の男子から告白を受けたこともあるけれど、恋人がいたことはない。


(いつか私も……好きな人ができたらわかるのかな? キスしたりして……)


ふと自分の唇に指先をあてて、ここねは気づく。朝から何だか恥ずかしいことを考えている。あの夢のせいだ。


「だいたい私には最愛の妹がいるから、真実の愛もばっちり知ってる知ってるっ!」


声に出して意識を無理やり切り替えると、ここねは枕元に置いたスマホを手に取った。


三月九日。


今日はここねの中学校の卒業式だ。


時刻はあと少しで六時半。アラームが鳴るより早い。もしかしたら気づかないうちに緊張しているのかもしれない。


「寒……」


 ベッドから出ると思わず声が出た。春だというのに朝はまだまだ寒い。


「さて、お寝坊さんの妹を起こしに行きますかー」


◇   ◇


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ココツキオリジナル小説

 『月ノ心ニ音、累ナル。』

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